家族サービス

8月も半ばを迎えた。
子供たちにとっては、「もう半月しかない」夏休みでも
親たちにとっては、「まだ半月もある」夏休み…らしい。


時折、家事と育児の合間を縫ってかけてくる友人からの電話は
子ナシの私にとって、結構面白い内容だけど
「ちょっと!笑ってる場合じゃないのよ!」といつも怒られてしまう。。。
夏休み期間中の、子供の昼ごはんの用意も相当な負担らしいが
まぁ、自分の子供といえど、確かに一日中家に居られたら
親としてはいろいろと大変なんだろな。


今日は新宿まで行く用事があり、友人と夫と電車で出かけることになった。
お盆休みの最中とあって、車内は信じられないくらい沢山の家族連れ!
小さな子供を膝にのせたママは、久々の「お出かけ」に満面の笑顔だが
パパは上の子と大きな荷物を預けられ、往路からかなりのお疲れモードだ。
ママも大変だけど、ふと、世のパパ達も大変だなぁ〜と思った。


我々には子供はいなくても、日常には「介護」がしっかりと根をおろしている。
子育てとはまた違った犠牲があり、それぞれの大変さはあるものだ。
心の中で、パパ達に「お疲れ様です」ってそっと声をかけたくなったが
実際のところ、ひとりひとりに与えられた役割と重荷があるのだから
人生に損得なんてないのかも…と思ってしまった。


さて。
用事を済ませ、たまにはスタミナのつくものでも食べましょう!と
新大久保のコリアンタウンに行くことにした。
ちょうどランチタイムだったので、あちこちの食堂からいい香りが漂ってくる。


最近開店したという、焼肉のお店に行ってみることにした。
ランチのおすすめを聞いたら、店の看板メニュー「豚の三段バラ肉」と
カンナで削った様な薄切りの肉・唐辛子のタレに漬けた肉の3種類だという。
面倒なので「全部一人前ずつ下さい」と言ってみた。


焼けた肉の上に辛味噌をちょっとだけ置いて、ゴマ油につけ
焼いたキムチとにんにくなどを挟んで
サンチュやえごまの葉、水菜やサラダほうれん草と一緒に食べると
う〜〜〜〜ん、幸せ♪ チョンマル マシッソヨ〜!


私も夫も友人も、お喋りがピタリと止まり、黙々と肉を頬張る。
ホント、これなら「二人のうち一人が死んでもわからない」ワ(笑)
いくらでも食べられそうな感じがする。
サービスで付いてきたサラダ仕立てのキムチ冷麺も、相当美味しかった。


それでも、この頃食べる以上に動くことが多くなり、睡眠も不足していて
夕方は、父の経管栄養の点滴の見守りをしながら
とうとう自分が居眠りをしてしまった。


父の病室に着いてまずは洗濯物をまとめ、あれこれベッド周りを片付けながら
椅子に座って2時間じ〜っと管から落ちる滴を、一滴一滴眺めていると
連日、物凄い睡魔に襲われる。


父の入院総日数はもう年単位になるが、点滴の見守りをしながら居眠り…なんて
今まで一度たりともしたことがなかった。
一瞬、熟睡してしまったらしく目を開けたら父がじ〜っと私の顔を見ていた。
ん・・・? 何か言った? 口が動いたけど。。。


ここ数カ月、父は滅多にモノを言わなくなった。
病院スタッフには勿論のこと、母にも私にも話をしなくなった。
「・・・い」
え???? 何なにナニ?
「・・・ぁい」


ドッキリ!した。痛いのか。どこが痛いのか。
看護師さん、呼んだ方がいいかな。どうしよう〜。
顔を近づけて聞いてみる。「なに?どうしたの?」


父は思い切り顔をしかめながら、こう言った。
「・・・にんにく、くさぁい!」


わははははは!
数カ月ぶりに聞いた父の声。


焼肉も相当美味しかったが
自家製キムチが何種類も出て
それもまた、それぞれに
マシッソッソヨ(美味しかった)
だったのだ。


どれもにんにくたっぷり!
しかも、にんにくのキムチを
途中の食品店でしこたま試食し
1キロも買って帰ってきた。


「ご家族の方々の健康も、とっても大切なことですからね」と
点滴を外しに来た看護師さんが笑いながら言った。
そうそう!父の介護支援が出来るのも、母や私の元気があってこそ!
にんにく万歳〜〜〜〜!これも家族サービスのためなのよ!(笑)