母のお気に入り

朝起きたら、食卓になにやら大層なものが載っかっていた。
シュ〜〜っ!なんて蒸気を吹き上げながら、野菜たちが容器の中で蒸されている。


先日の血液検査で 「ひどい貧血」を言い渡されてから食事内容がすっかり変わり
毎朝、山のようにほうれん草や小松菜、カボチャにイモ類、人参にトマトまで…
温野菜のプレートが登場するようになった。


豚肉も体にいいから食べなさい!と、毎日薄切り肉も一緒に蒸し器に入れられ
シュ〜〜っ!と10分。
2枚も3枚も…って、元々肉食系ではないので 「食事も薬!」と言われても
これ、結構しんどいかもよ。


食事も薬・・・ではないが、「食事も修行のうち」と
学生時代、京都や奈良の寺院で修行をしていた時、菜食料理がとても口に合って
一瞬、自分で作らずとも、職場でこんなに美味しい食事がいただけるのなら
尼僧は無理でも、寺院の事務員になれないだろうか…と本気で思ったことがある。
素材の味もあるのだろうけれど、お寺の食事は私の体に合っていたんだね。
ホントに美味しかったなぁ〜♪


そうそう、今朝なんてバナナの実まで、ぶにょ〜〜んって蒸されていて
「ホレ! 鉄分入ってんだから食べなさい!」って私の皿にデンと盛られたけれど
水分たっぷりのぶよぶよ蒸しバナナは、どーしても口に合わず、ゴメンナサイ。


母はブリブリ文句を言っていたけれど、自分でも食べてみて
「あら、ホント。なんかあんまり美味しくないわね」だって。
何でもかんでも 「蒸せばいい!」というわけではないと思うのですがぁ〜。


結婚した時に購入した鍋一式の中に、蒸し器をセットして使える大鍋があり
こちらはガス対応だけど、それなりに便利に使っていた。
ただ、ひとりふたりではとても大掛かりな洗い物になってしまうし
来客時に中華料理でもしない限り、最近はあまり使われなくなっていた。


人間、ちょっとでもメンドイとすぐに奥へ奥へ…としまってしまうものである。


♪あっという間にすぐに沸く〜 のシリーズに電気の蒸し器があり
これならお手入れも簡単、おひとり様・おふたり様でも十分に使えるわぁ〜と
家電量販店に行くたび、母は「欲しいー欲しい〜」を連呼していたが
私の収入?では、とてもとても気軽に買えるものではないので
何かきっかけがあれば買うだろう〜と思って、放っておいた。


で。
私の 「貧血」がそのいいきっかけになったみたいで
「あら〜大変。栄養素を逃さずにいただけるものっていいみたいよ。
蒸し器、早速買わなくちゃ〜!」と母はすぐに量販店にすっ飛んでいき
40分後、にこにこしながら「買っちゃったわよぅ〜」と箱を抱えて帰宅した。


使い始めは子供と同じ・・・。
物珍しくて、何でも蒸してみたがる。


初日なんて、説明書の蒸しあがり時間が 「あまりにも短い!」と信用せず
カボチャを薄〜く薄〜く切り過ぎて、蒸しあがったらテロンテロンになっていた。


「さぁ〜お食べ^^」と言われても、箸でつまむことが出来ず
ほとんどが蒸し器の網の目からこぼれ落ちてしまい、全くあ〜〜ぁ、である。
しめじなんて原形の10分の1くらいに、しゅぅぅぅぅぅ〜〜と縮んでしまった。
こんなん・・・栄養素も何も、食べられないジャンー(泣)


今夜はウィンナーと魚のたらの切り身を下の段、野菜を上の段にして
2階建て容器初使用〜〜〜!で蒸し上げるみたいだが
果たしてどんな感じになるのか、毎回が化学の実験の様だ。


母の興味が落ち着くまで、私は黙って蒸された温野菜たちを摘まんでいるが
そのうち、この蒸し器で中華三昧でもしましょかね。
ちまきやしゅうまいを蒸しつつ、油を使わずにエビチリも出来そうだし
青菜なんて蒸せば色よく仕上がりそうだ。
楽しみ〜〜〜〜〜〜っ♪


さて。
実は、本題はここから。


昼間の限られたプライベートタイムに、私は大抵パソコンの前に座り
いろいろと用事をこなしている。
メールの返事を打ったり、ネットで調べ物をしたり・・・と
割と集中しなければ、はかどらないものが多い。


そんな時、母はなぜかウロウロと私の背後を行ったり来たりしつつ
あるいは隣のリビングで新聞を広げて、でっかい独り言を言い始める。


最初はそれなりに相槌を打っていたが、いちいち返答していたら
自分の作業が捗らない…どころか、集中力が途切れて
どこまでやったのかわからなくなってしまう。


今日もまた、用事を済ませて帰宅した母は早速リビングにやってきた。
いつものでっかい独り言を覚悟をしていたが、ひとりで何かを作っている様で
ひと言も言葉を発しない。


へ?・・・って思って、襖の隙間からそっと眺めてみたら
その蒸し器が入っていた箱の中に、使っていない段ボールをはさみで切り揃え
むぎゅ〜っと詰め詰めしている。
そして箱のふたをしめ、その上に使っていないバスタオルを畳んで置き
更にその上からすっぽりと大きな風呂敷でカバーをし、両脇を結んでオワリ〜。


「ね〜〜〜、見てみてみてぇ!」と母が呼ぶ。
一発で応じなければ、更に声がデカくなる。


はいはい…とリビングを覗いてみたら
「あのネこれネ、リビングでTV観る時にちょうどいい高さなの。
凄っごく座りやすいから、座ってみて〜。
あ、それとも、正座してパソコン打つの大変だから、あげようか?
横にすれば、座れるんじゃない?」と。


箱を横に、ね。
では・・・と早速試してみたら、
グズッという音と共に、すぐに箱の真ん中がひしゃげてしまった。


一瞬の沈黙。。。


・・・ワハハのハ〜〜〜〜^0^;
(誰ヤ〜! 私の尻圧[ケツアツ]が凄いからダーなんて言ったのは!)


すぐに母のスイッチが復旧し 「もっと箱、ないかな…」と部屋の中を見回し
私が物入れに使っていた段ボールを潰して、はさみで切り切り←チョットチョット〜!
箱のふたを開け、隙間にぎっちり詰め込んで、ガムテープでぐるぐる巻きにして
改良品がパワーアップして完成〜〜〜〜♪したらしい。



一丁あがりぃ〜!の自信作
完成品はこちら――――→


つい数日前までは
下半身痩身のために、と
バランスボールに座って
相当な振動を立てながら
TVを観ていたが、すってん!と
ひっくり返って以来
夫が買ってきたRodyに
またがっていたりする。


が、どうやら高さが不足していた様だ。


母は気が向けば、妙〜〜〜〜なものをリサイクルしちゃう趣味?があるみたいで
以前は履いていたのびのびズボンを、エコバッグに作りかえたことがあった。
(その時の記事はコチラ
一度買い物に持って行き、かなり大変な目にあった様で
あれ以来一度も見ていないが、どうなったんだろ、アレ。。。


今は 「この箱、いいわぁ〜」ってナイスなアイディアに満足しているが
来週の資源物2類のゴミの日に、段ボールが大量にひもで括られ
我が家からゴミの集積所に運ばれないことを願うばかりだ。