母の買い物

母はトンデモナイところで、妙〜に不思議なものを買ってくる。
しかもどれもが新品なのに、かなりの破格値で手に入れてくるのだ。



たとえば、近所にある
新品も扱っている
セコハンショップで
数日前にペッパーミル
買ってきた。


真新しい商品で
価格は300円だったという。


これはまさにお買い得!だ。


料理に応じて粗挽・細挽も
出来るようになっている。


今宵も鼻歌交じりに台所に立ち、ガ〜リガ〜リと景気よくこしょうを擦っているが
入れすぎないでよぉ〜〜〜と、内心ヒヤヒヤだ。


私と母とは、同じ店に買い物に行っても、目の行くポイントが違うのか
「それ、どこで売ってた?」などと聞きあうことも多く
親子であっても互いの興味や趣味・嗜好…というのは違うものダナ〜と思った。


母はこれまでもいろいろなところで、エ〜〜〜!?っと思うものを買ってきた。
韓国やHawaiiで、なんのためらいもなく 「これ、下さい」って
布団を買ったのには、流石にびっくりしたし(←よく持って帰ってきたナ〜)
お友達と巣鴨に繰り出せば、「すがも」と黄色く刺しゅうされた
名物の赤パンを 「ホレ、お土産〜」と、私の分まで買ってくる。


「ありがたや〜」というよりも、コレ、誰がいつどこで穿くんだ・・・?
と悩みに悩み、結局、いろいろ考えて
北海道在住の従妹に、宅配ついでに荷物の中に紛れ込ませた。


私からのプレゼントだと思われては困るので
ちゃんと 「おばちゃんからです。パンツ温かいわよ」とメモを貼りつけた。


他にも旅先で大判のお皿を買ってきて、飛行機や新幹線に乗って持ち帰ってきた。
アウトレットで買ったとはいえ、ちゃんとしたブランドモノの大皿である。
まともに買ったら、相当な金額のものだ。


「あらぁ、英世ちゃん2人分だったし、ステキだったから〜」と笑っていたが
保護紙をぐるぐる巻きつけてあっても、よく壊さずに持ち帰ったな…と
包みをほどいてから、ヒヤヒヤしてしまった。重たいのにね。


改めてぐるりと家の中を見回してみると、そうした「母の土産の品」が色々ある。
台所や食卓に、花を生けている器や寝具、服や靴にクリスマスのオーナメントまで
それなりに日常生活の中で普段使いに用いられているのだから、大したもんだ。


ふっと、初めて母を海外に連れ出した時のことを思い出した。
かれこれもう20年以上も前のハナシになる。


それまで、海外なんてとんと縁もゆかりもなかったらしく
いきなりロンドンの街中に連れていったら、見るもの全てが珍しかった様で
カメラを片時も離さずに「うわ〜うわ〜」とシャッターをきりまくっていた。


1ポンドが250円の時代・・・。やっぱり、それなりに物価は高かった。


そんな中にあって、スーパーには足繁く通い、そこで買って食べたビスケットが
「凄く美味しかった〜!」と(←確かに値段もとってもお手頃だった)
その旅ではそれをお土産として買いまくり、職場用・友人用・兄弟達+親戚用
あとは自分でも食べたいので…と、実に20箱ほどのお買い上げ〜。


レジのお姉さんが、次々と同じ商品ばかり精算台に並べられるのを見て
面白そうにクックック…と笑っていたが
最後に丁寧に“Thank You,Mam.”と言ってくれたっけね。


レジで貰った袋にいくつも振り分けて、えっちらおっちらと地下鉄を乗り継いで
ホテルに持ち帰ってきたけれど、勿論、こんなに大量のビスケットの箱は
スーツケースに入るわけがない。


「どうやって日本まで持って帰るのよ?」と聞いたら
ホテル近くの雑貨屋に、ちょうどいい袋があったから、それを買うという。


母が買ってきたものは、青い色の丈夫そうなビニールで出来た
持ち手まで付いた大型のバッグだった。しかも、価格が凄く安かったらしい。
そして、誂えたかのようにビスケットの箱、20箱がその中にすっぽり収まった。


帰国の日、「ちょうどいいわね」と母は上機嫌でホテルの中も空港内も
その袋を持って歩くことになり、機内にも手荷物として持ち込んだ。
その時、利用したのは英国航空である。


母には内緒にしてたけど、その青いビニール袋には
“garbage”(ごみ袋)って書いてあったんだよね。


その袋を持って母は“ Thank You〜 ”と言いつつ、成田に降り立ったが
降機時に機内から見送ってくれた客室乗務員のお姉さま方の視線が
その“garbage bag”に注がれていたことも、今となっては懐かしい思い出だ。


ま、ね。
たとえば、おせんべいを沢山詰め込んだ『東京都23区指定ごみ袋』を抱えて
外国の方が電車に乗ってきたら、私もちょっとビックリするかも。ふふふ。


その“garbage”の青いビニール袋は、今の家に引越してくるまで
母の園芸用品が詰め込まれ、ベランダにず〜〜〜〜〜っと置いてあった。
中に入れてきたビスケットはとっくの昔に食べてなくなってしまったが
この袋だけは本当に長い間、10年以上も現役で使われ続けていたっけ。


さて、母が洗濯物をたたみながら、なにやらデッカイひとり言を言っている。
「あ〜この下着、温かいし着やすいし、もう一枚欲しいなぁ〜」だそうだ。


下着くらい、買ってくればいいのに…と思い、「買いに行けば?」と言ったら
「遠いから無理」だと言う。
一体、どこで買ったのよ?と聞いたら、「ベルギー」と答えた。


・・・母は、わざわざベルギーまで行って「あったか下着」を買ってきた様だ。


「着替えが欲しいよぅ〜」と連呼しているので
ユニクロヒートテックでも一枚買ってあげようかと思っている。
旅費を考えれば、お安いものダ。。。


そして母は、早目のクリスマスプレゼントとして、お望みのものをGet!する。
全く、買い物上手だな〜〜〜〜〜〜〜ぁ。