アシスタシア

母がまた、鼻歌交じりで帰ってきた。
「この花、初めて見たのよぅ〜!」と、花のポットを持ってニコニコしている。
何本かの細い枝先に、小さめの花がいくつか咲いていた。


「さ、植えて来よ〜〜っと♪」と、日の沈んだバルコニーにいそいそと出て行く。
空いているプランターに手際よく必要な土を入れ、肥料をパラリと混ぜ込んで
花をそっと置く。周りに土を盛ってぽんぽんと慣らし、一丁あがりー!だ。


一度母が 『畑』に出たら、2時間は戻ってこない。
(こりゃ、今夜も夕食作りの「当番」は私だな…)
散らばった土をほうきで掃きながら
「しっかし、な〜〜〜〜〜〜〜んで葉っぱや花びらって、こうも毎日毎日
次々と散るのかしらねっ!
朝晩掃除してても、綺麗になりゃしないワ」なんて言っている。
・・・そりゃ、好んで増やしたからだろう。


ホントに気がつけば、バルコニーはちょっとした空中庭園だ。


高価なものを買ったわけではない。
量販店の花木コーナーで 「特価品」のコーナーに並んでいたものたちを
ひとつふたつ・・・と買い物ついでに母が買ってきたものばかりだ。
主流はひとつ39円から、せいぜい98円位までだが
中には300円の大台にのったブーゲンビリアもある。


どれも最初は弱々しくて、枯れるかな・・・って思ったけれど
根付いてしまえばぐんぐん成長し、あっという間に枝葉が伸びて
夏場なんて「プチジャングル」の様になってしまう。


今はその300円ブーゲンビリアが満開になり
片手で持ち帰ったはずなのに、私が両手で抱えるほどに大きくなった。
あとは、水かけや風雨などで折れた枝を挿しておいたら、それが根付いたり
あるいは種がこぼれたり飛んだりして、思わぬところに色々な花が咲いている。


トレニアなんてあちこちに増殖を開始していて、抜いても抜いても芽を出す。
抜いたものが捨てられず…、隅にあった何も植えていないプランター
置いておいたら、それまで立派に花を咲かせ、全く見事なもの。。。
先日はそのプランターごと知人宅に貰われていったが、まだまだアルゾ!


「随分扶養家族が増えたわねぇ」なんて、母がしみじみつぶやいている時もあるが
これはドコで買ったモノだの、分けてもらった枝を挿しておいたモノだのと
よくこれだけの植物たちの名称をひとつひとつ覚えているものだ…と感心する。



今回買ってきたものは
『アシスタシア』という花。
紫がかったピンクがカワイイ。


まだ市場にはそんなに多く
出回っていないのか
いつも行く花木店では
見たことがないらしい。


「キツネノマゴ」科…なんて
何とも可愛らしい分類だ。
しかも、この植物の若葉は
食用にもなるとのこと。


前に「さつまいも」の葉も食べられると聞いてタマゲタけれど
意外とその気になれば、食せるものも我が家にはあるのでは・・・と
改めてしげしげと眺めてしまう。


ちなみに・・・今回は母としては「結構〜奮発した!」そうな。
ハイ! 奮発した値段はコチラ〜↓


母曰く「我が家は花そのものよりも、肥料や消毒剤の方が高い」らしい。
そしたら、ウチのガーデニングにかかった費用で
一番高いものは2990円で買った 「散水ホース」かなぁ〜と言ったら
「何〜言ってんのよ。もっともっと高いものがあるでしょっ」といわれた。
えぇっ!? ・・・そんな高価なものなんて、あったっけ。。。?


おもむろに、水道料金の領収書を突き出してきた。
い、一万円を越えている! うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ビックリ。


「我が家の扶養家族には、全くお金がかかってねぇ」なんて時々母が言ってるけど
まさか、それを聞いた人たちは 「娘(私)さん?」って勘違いしてないわよねー。


夕食は冷蔵庫の中をのぞいて、フライパンで石焼風ビビンバを作ることにした。
卵を割り落とす前に 「出来たよ〜!」と、バルコニーの母に声をかける。
「はいよー」と手を洗って食卓につく頃に、ちょうど黄身が半熟になるんだな〜。


いつか我が家の食卓に、アシスタシアとさつまいもの葉っぱやつるの料理が
載る日が来るんだろうか〜なんて考えながら、とろり〜とした黄身をつぶした。